忍者ブログ
新しいカテゴリーに名前を登録後、自分の作品投稿の際にカテゴリーをつけてください。 題名には、キャラとお題も入れてください。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



古びた小屋の前に立ち、錆びれた蝶番の扉をノックする。中から返事は無かったが、この場所を知っている人間が少ないことを思えば、彼には返事など時間の無駄なのかも知れない。或いはその肌に染みついた特殊な能力が、己の気配を覚らせているのかとも思う。円卓の騎士の一員になったとはいえ、未だその力には知らないことも多い。
「ガラハッド」
「……ランスロット、か」
剣の手入れをしていた手を止め、その名の持ち主が此方を見る。愛刀とそれを拭っていた布を机に置き、立ち上がりながら改めて此方を向いた。武装を外して笑ってみせたなら、童顔も相まってとても円卓の騎士には見えないだろう。
円卓の騎士となる前から、彼はこの部屋を使っている。武具の手入れに適しているというのは建前で、精神統一できるということの方が彼にとって大きな利点なのだろう。出会った当初、人の前に立つことを彼は嫌った。手合せをした際、ざわつく場所、人の多い場所が苦手だと溢したことがある。切れ味が鈍るのだそうだ。自分はそれを、言い訳に過ぎないと切り捨てた。その程度で精神を乱しているようでは話にならない。
初めて手合せをした時のことを覚えている。トリッキーな技を使う相手は厄介だが、刃を交わした感触は“浅い”というものだった。本領が発揮できていない。そして同時に、伸び白の大きさを感じた。腕にも瞳にも、まだまだ強くなる余地を湛えていた。完全に力をものにできたなら、その時は自分をも凌ぐかも知れない。それは予感に過ぎなかったし、自分とてこの程度で力量を定めたつもりはない。
ただ一瞬、剣を折られて自分を睨み上げた瞳に鳥肌が立ったのだ。
成長が楽しみでならないと同時に、もっと手を合わせたいと思う。もっともっと、強くなればいい。薙ぎ倒して後ろも顧みない程に。
「また手合せしてくれるのか?」
「そうしよう」
にこやかな笑みの下に狂気が潜んでいないか探ってしまう。それは何処か、獲物を狙う感触に似ていた。

2012.7.27
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
最新コメント
[10/15 章屋]
[10/09 恵梨香]
[08/20 なる]
[08/04 ゴチ]
[08/04 ゴチ]
ブログ内検索
フリーエリア
バーコード
忍者ブログ [PR]

Template by テンプレート@忍者ブログ