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お題:スパソニ ランスロット  限界ギリギリ



僕が、片腕を無くし。彼は、理性を無くした。

気がつけば、辺りには僕と彼だけ。穏やかでない風の音と、どくどくとやけに響く鼓動と、刺すような痛み。
襲ってきた異界の者達は、今やその姿を一様に消していた。
彼はどす黒く穢れた血を全身に浴びながら、怒りの黄金を未だに絶やさない。
「っ・・・ランス・・・ランスロット!」
振り返って即刻駆け寄ってくる主に、僕は笑って見せた。・・・笑えていたか、分からない。
「申し訳、ございません、陛下・・・。・・・利き腕を無くした騎士など・・・これではもう、
王である貴方をお守りすることも出来ませんね・・・」
傍らに転がる、僕の愛剣と、誇りだった右腕。それらを主は大事そうに拾い上げ、胸に抱える・・・
「・・・畜生・・・また、守れなかったのか・・・」
その光に飲み込まれてしまいそうな、僕の片割れ。
いっそそのまま飲み込まれて、彼を守る力になってくれたならどれほどいいか。
「ランスロット、待ってろ。今すぐ城に連れ帰って・・・」
「陛下・・・。・・・僕は、もう駄目です・・・こんな、円卓の騎士として恥ずべき身体と成ってしまっては・・・」
「馬鹿、お前らしくも無い事言ってんじゃない!」
「・・・陛下のお顔も、もう・・・霞んでるんです・・・血は、どのくらい流れてますか・・・?
僕には・・・それを確かめる事も出来ません・・・」
恐ろしくて。身体を動かせなくて。もう、彼の傍らには立てないのだな・・・。
主は僕の身体を抱え上げた。僕の血が、また彼を汚してしまう。
「絶対助かる、俺が助ける・・・!腕が無くたって、お前は俺の・・・!」
駄目だ。もう・・・駄目だって、頭が理解していた。頬を伝うのは、どちらの涙なのだろう・・・
「陛下・・・貴方の為に死ねるなら、私は・・・」


どうやらそれが、僕の限界だったようだ。





・・・・・・・・・・







「・・・無理はなさらないで下さい、ランスロット卿。術が解けますよ」
「貴女という優秀な魔導師がいるんだ。頼りにしているぞ」
右の二の腕に、黄金の魔術具と紅い宝石。マリーナの力を封じ込めたリングで、切り離された二つは繋がっている。
自然豊かな中庭で、愛剣の感触を確かめながら素振りを繰り返す騎士を、彼女はただ見守っていた。
「一週間も寝込んでおられたのですよ?体調も考えて下さい。また貴方が倒れたら、今度こそ王が発狂しかねません」
「・・・ああ。もう少ししたら部屋に戻る」
死にかけていたランスロットを救ったのは、マリーナとソニックだった。
もう少し、ソニックがランスロットを運び込んでくるのが遅れていたら。今と成っては考えたくも無い。
「これで、あのお方を護り続けられる。・・・今度は、このような失態は繰り返すものか」
「そうしてください。それ、精製するの本当に大変なんです」
それ、と宝石をはめ込んだリングを指差す。これさえあれば、彼は以前と変わらぬ生活を送り続けていられる。
そう、封じ込めたマリーナの力が継続するうちは。・・・彼女の死後数年は持つらしいが。

遠くから、聞きなれたいとおしい声。
「ラーンス!ランスロットー!何処だよー!」
「ほら、陛下が探してますよ?早く安心させてあげて下さい」
「ああ。ありがとう、マリーナ殿」
愛剣を鞘に戻し、中庭を出る。途端、曲がり角の向こうから彼の視線を感じた。
「陛下。お呼びでしょうか?」

また、貴方の傍に居られる。それだけで、私は幸せです。
今度こそ、心からの微笑みを浮かべていた。
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無題
おおおーー 凄い…なんか1冊本作れそうな壮大な感じ!
ぽぽ 2010/09/03(Fri)01:46:17 編集
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