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『彼女は何故、手を伸ばしたのだろうか?』
僕はソニックから、興味深い話を聞いて、そう思った。
ソニックは先日、『アーサー王と円卓の騎士』の世界に召喚されたと言うのだ。
僕自身は『そんなバカな事が』と思ったのだが、ソニックの顔はいたって真面目だ。
この男は軽口を叩く男ではあるが、ウソは付かない事を知っている。
それに、ソニックから聞いた話がそのまま、新たな解釈の物語として、登場し始めている。
どうやら、ソニックの言う事は本当であると認識せざるを得ない。
その話の中で登場した、ソニックを召喚した少女の話…
彼女はどうして、その手を伸ばそうとしたのか…
ソニックは少女の事に関しては、特に何も話そうとはしなかった。
僕が知る『アーサー王と円卓の騎士』の物語は最終的に、悲劇で幕を閉じる。
彼女はそれを知っていて、それを阻止するために、様々な計略を行った。
決められた物語、変えようがない運命(さだめ)に抗いたかったのだろうか?
『そんな無駄な事を』と、僕は呟いたが、抗ったからこそ、物語に変化が起きたのは事実なのだ。
そして、僕は彼女の存在を考えるうちに、自分自身の姿も重ねていた。
そうだ、僕も運命に抗ったからこそ、今の自分が存在するのだ。
「なるほど…確かにそうだ」
僕は自分自身の手を見ながら、先ほどと正反対の事を言葉として、口から出していた。
最初は誰だって、無駄な事だと言う。だが、行動に移す事で、変われる何かがある。彼女もそうだったに違いない。
僕は自分の手を空へと伸ばす。天空に向けた僕の手が、彼女―マリーナの手と繋がるような気がした。
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