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Dr.エッグマンが引き起こした事件が、この世界の混乱だというのはわかっていた。

 

それにソニックが立ち向かっていることも。

今回の冒険には、空を飛べる小さな生き物がついていることも、新聞記事の写真に掲載されていた。

だが、もう一人、大男?大狼?がいっしょだと言うのは聞いてない。

GUNの混乱を放置して出かけようとするのを、ルージュが心底呆れた顔で見送ってくれた。 

復活したカオスエメラルドが星のどの位置にあるのかを計算し、次にソニックが訪れるのはアダバタという海に浮かぶ島国だと予想がついた。

カオスコントロールが使えないのでGUNのヘリを使って、アダバタの小さな村のある島へ降り立てば、見慣れた2尻の子狐がいる。

 

「やぁ、シャドウ!ソニックなら、ジャングルの方へ行ったよ」

「こんな夜半に海の上を走っているのか?自殺行為だな」

「あ…ええと、まあいいや」

曖昧に言葉を濁したテイルスを、ギランと睨みつけた。

さか、噂の大狼と一緒なのでは。

シャドウも夜半の海の上を走ってジャングルへ向かう。ちょっとだけ自殺行為だった。

海とジャングルしか存在しないはずの島に、石造りの建造物があった。その中心に近い場所で、青白い光が集まっているのが見える。

ドクターが解放した闇の生き物だ。ソニックが戦っているのは間違いがない。

急いでその場所まで駆けてゆくと、例の大狼が拳を振り回していた。

ソニックは?

…ソニックは?

 

「やったね、ソニック!イエーイ!」

  

小さな生き物とハイタッチをする大狼。

月明かりを浴びて変身する、物語の獣そのものだった。

 

「何故、キミが、そんな姿に」

「う、うわああ!! シャ、シャドウ!??」

 

大狼が、細いヤシの木の影に必死で隠れようとする。が、顔以外全部見えている。

ボクを認識して、すぐに「シャドウ」と呼ぶのはソニックしかいない。では、やはりこの大狼が…。

 

 

「出てこい、ソニック。何故隠れる?」

「だ、だって、オレは…お前に見せられる顔じゃ…ねぇよ」

 

その図体に似合わず、語尾は細くなる。いつもの自信であふれるソニックとは全く違う。

声も低く、重い。だが、心地よいと感じるのは、いつも通りなのに。

恥じているのだろうか、その姿を。

 

「ボクはキミに会いに来た。だけど、キミが会いたくないというのなら、ボクは帰る」

「シャドウ…オレだって、会いたかった。でも、こんなオレじゃあ、お前を抱きしめた途端に握りつぶしかねないから、さ」

 

冗談混じりに、でも隠しきれない戸惑いを感じる。

シャドウを潰せるなんてできない、解っているはずだ。

 

「ならば、この冒険が終わったら、また会いに来る」

「まっ、待ってくれ」

 

ジャングルから浜辺の方へ駆けだそうとすると、ソニックがあり得ない腕の長さでシャドウを捕まえた。

優しく長い腕で抱きしめてくるその大狼の顔は、シャドウには見えない。

だけど、やはり彼は。

 

「冒険が終わったら」

「いい忘れるところだった」

「オレに言わせろ。愛してる、だろ!」

 

ふわりと、手の力がゆるんだ。

シャドウは月明かりのジャングルを駆けだした。

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