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首根っこを押さえられ地面に縫い付けられる。漆黒の体毛は光を吸収し視界を暗く淀ませていた。尤も、酸素が脳に行き届いていないだけかも知れない。
「どうした、救世主のなり損ない」
「……」
声帯を押さえられては声を出すこともままならない。此方を見下ろしぎらつく瞳の緑がよく栄えて綺麗だ。自分の姿が映りそうなほど近い。
「笑うなんて余裕じゃないか」
不快さを滲ませた声に合わせ首へとかかる圧力が増した。指摘され初めて、自分の口角が上がっていることに気付く。
自分から見る彼は完璧だった。正しくは、完璧を望まれた人だった。期待に応えるだけの器量も能力も持ち合わせ、誰よりも速く、強く、そして優しかった。今思えばそう在ることを彼自身が己に課していたのだろう。その矜持の裏側に、彼が見てきた多くの痛みと悲しみがあると気付くまでには暫くの時間を要した。
いつか見たいと思っていた。
彼が何を知り、望み、諦め、恨んだかを。
それを知ることで、自分は本物の救世主になれると思っていたのかも知れない。だとしたら我ながら滑稽だと思う。その願いが叶う時が来たらしい。
今なら彼に手が届く。
それなのに、どうして両腕が見当たらないのだろう。
2010.9.3
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