忍者ブログ
新しいカテゴリーに名前を登録後、自分の作品投稿の際にカテゴリーをつけてください。 題名には、キャラとお題も入れてください。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

思い切り吹っ飛ばされて受身を取ることすらままならない。
壁に叩きつけられたはずなのに、次の瞬間には棘を捕まれ宙吊りにされる。
彼の双眼が自分のそれを覗き込んできた。視界が霞んでいるのは眼球が潰れかけているのだろうか。それとも先程から止まらない血が目にでも入ったか。
「綺麗だな」
いつもよりオクターブ下がった声で彼が笑う。棘を掴む右手に反比例するように、頬へと添えられた左手は優しかった。慈しむような指先は、血と体温で温かい。瞼をなぞる様に触れる指の感触は分からなかった。
「よこせよ」
彼が言って、次の瞬間ぶちりと音がした。思いのほか痛みは少ない。視細胞はとっくに死んでいたらしい。所詮器に過ぎないんだなぁと人事のように思う。

眼球だって何だって、好きなだけ抉ればいい。
持てる分全部くれてやって構わない。
ただ、死にたくはないと思う。

「腕でも足でもアンタにやるよ。でも殺すな」
「命乞いならみっともないなぁ?」
「違う」
見えなくなった右目が彼の手の中にある。遠近感が狂った世界で、腕を持ち上げ彼へと伸ばした。
如何してこんなことになったのか、もっと早く気づけたら。
そう思うのはエゴだから、代わりに全部持っていけ。



「悲しいんだろ」

独りにして、ごめん。





背中に伸ばして抱きしめた手は、彼の心に届いただろうか。





2008.08.19

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
<< 彼に連れられて  [15]  [14]  [13]  [12]  [11]  [10]  [9]  [8]  [7]  [6]  [5HOME シル Dソニ >>
最新コメント
[10/15 章屋]
[10/09 恵梨香]
[08/20 なる]
[08/04 ゴチ]
[08/04 ゴチ]
ブログ内検索
フリーエリア
バーコード
忍者ブログ [PR]

Template by テンプレート@忍者ブログ