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どんな生活感の無い部屋でも、自分の部屋など持ったことの無かったオレには、その部屋の主の薄い匂いを探してしまう。
留守番していろ、と言われたけれど、ここには遊べるゲームなんかも無さそうだ。好きにしていいってことは探検はかまわないのか。
まず目についたのはくもりガラスの窓。外の景色が見えないんじゃ意味なんて無さそうだ。GUNの部屋だから覗かれちゃまずいんだろうな。でも好きにしていいって言ったから大きく開け放つ。窓枠にぶら下がったカーテンがパラシュートみたいに飛んでいく。
それからキッチン。食器はスチールみたいなカップと白い陶器の皿が何枚か。きっと本人と来客の分だけ。砂糖に塩に香辛料がきっちり並んでる。冷蔵庫ではケチャップが上向きに、マヨネーズは下向きに。
アルコールは入ってない。ちょっと残念だ。勝手にコーラを貰って一息に飲み干した。
ランドリーからバスルームも覗く。きっとここは部屋の管理人が掃除してるんだろう。シャワーの下の排水溝に黒以外のトゲが落ちてないか念入りに調べてみた。何もない。じつにざんねんだ。
思いついて、自分の白いトゲを一本抜いて、排水溝に差しておく。
またリビングに戻る。風が通り抜けて気持ちがいい。
ソファーに座ると、沈むように柔らかなクッションに包まれて、つい眠くなってしまう。
テレビでもつけて待ってようかな。
「こんな場所でうたた寝していると身体を冷やすぞ。ベッドで休め」
ここの家主は、自分のテリトリーではこんな声を出すのか。ここが安息の場所。永遠ではなくても。
眠くて、身体が動かない。クッションを抱きしめてその温もりを手放さずにいたら、ため息の後で抱きあげられた。
・・・そういえば、ベッドは探検してなかったな。
いい匂いだといいけど、きっと彼の匂いは薄いから、オレの匂いを移してやろうっと。