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ちょこっとグロはいりますちゅーい。
闇色の指先が、白いシーツを引っ掻いた。
クツクツとさも可笑しげに嗤い声を漏らすその口元に消化器官は存在しない。
黒と白のコントラストだけが妙にはっきりしていて、薄碧色すらも溶け合って境界線すらも曖昧にしていく。
闇に浮かぶくすんだ色が妙に記憶に残る。
塗り潰されないその蒼とも青とも碧とも言えない色は爪を鮮やかに彩っては自分に向かって伸ばされた。
反射と言っても良いほどの素早さで己の腕がそれを乾いた音と共に振り払った。
おや、と残念そうでもない表情でさも心外だという声色を発する。
目の前の生き物が嫌いだった。嫌悪と言わず、その存在そのものが疎ましく厭ましく、
形成されているだけでも吐き気を催す程だった。
鼓動も何も起こさない、熱も通わないそのあくまでも『生き物の範疇を超える存在』
それは自分もそうではないかと言われてしまったら、言葉を紡げないのも事実だ。
自分とこの目の前の化け物は過程は違えど根底は同じなのだ。
『不必要』な存在でしかない、生き物にもなれない紛い物。
「ふふっ…どうしたんだいシャドウ。今日はボクを開かないのかい?
いつもみたいに内臓も心臓も何もかもこの白亜のシーツの上にぶちまけて」
「煩い。貴様は黙っていろ」
クツクツクツ。嗤い声が止まない。煩わしい程に脳に響き渡るそれが麻痺を起こして心という器官を壊死させていくかのような感覚を味わった。
手にしたナイフの柄を握り締める。
フォアグラを切り取るかのようにフォークの代わりにナイフを握らぬ手を添える。
ぐ、と力を込めれば確かな感触と共にどろりと溢れ出る漆黒の体液。
そのまま胸から下半身に向かって真っ直ぐに滑らせれば、水音を立てて白亜が漆黒へと染まっていく。
線に沿って指を、腕を使って割り開く。
みちりという音と共に緩やかに拓かれていくそこには有るべきものが収まっていた。
骨。肺。肝臓。胃。腸。心臓。
どれもこれも今ついさっき作られたかのように新品のレプリカじみて体液に塗れて光沢を放つ。
紅など存在しない。
模しただけのその器官に鼓動というものも循環というものも存在しないのだから。
体内の中で伸びたチューブを思い切り引っ張り出した。
臓物の柔らかな感触の筈なのにどこかそこらに捨てられたビニールホースを手に取ったかのような気分を味わう。
どこからが現実でどこまでが妄想の産物なのだろう。
そもそも僕らは最初から生まれていなかったのかもしれない。
始めから存在していないのであればこの空間は夢想で目の前にいるこれもただの事象でしかなくなる。
闇色の指先が伸ばされて、小さな拳を作った。
眼前でそれは開かれ、自分の頬へと伸びてくる。
既にそれを振り払う気も無くなっていた。