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 どこかで見た事のある様な、無い様な。久し振りの海釣りで掛っ
た獲物はとにかく――不思議だった。
 体長は優に三メートルを超えているだろうか、やたらと飛び出し
た鋭い牙が恐ろしい。
 頭から尾びれまで、透き通るようなブルーだが、目を見張るのは
、二股に分かれている緑色の尾びれ。――不思議だった。
 青空に舞うカモメ達も、相棒のカエル君も目を丸くしている。こ
れは本当に――不思議だった。
 鱗が一部剥がれていた。徐にその中を覗き込んで見た。
 赤い血が出ているが、その体内は定期的にチカチカと信号の様に
点滅している。――不思議だった。
 これは、どうにも分からない事だらけだった。そもそも魚なのだ
ろうか?。鰭もよく見ると両生類の足の様にしっかりしていた。
 そして骨だと思っていた物は、爪と言った方がいいのかもしれな
かった。
 バスケットボールぐらいの大きな目玉がこっちを凝視している。
 目の奥は小さなガラス玉がビッシリと敷き詰められている様だっ
た。これは奇麗だ。
 しかし、その一粒一粒がそれぞれ不規則に動いている。魚の目と
言うよりは、蠅の目の様だ。――不思議だった。

「ビッグぅ! 魚釣れたの? え……」

 バーベキューの準備をしていたエミーがやってきたが、凄まじい
悲鳴を上げて引っ繰り返った。カエル君も潰されないように飛び上
がる。――やはりこれは、とんでもない物なのだろうか?。
 エミーを起こしてあげた。エミーの手は恐がっているのか、強く
握り締められ、簡単には、離してくれなさそうだった。
 皆の所に持っていけば、何かわかるだろうか?。何かわかれば、
おいしく食べられるかもしれない。そうだ、持って行こう。
 でも。
 
「………何だろうぉ?」

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