忍者ブログ
新しいカテゴリーに名前を登録後、自分の作品投稿の際にカテゴリーをつけてください。 題名には、キャラとお題も入れてください。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 別に俺が、こんなカッコ悪いことしなくても良かったんだけど。




骨まで軋むほどの重力がソニックの体を地べたに撫で付けている。その頭上で息を切らし、勝ったと言わんばかりの銀鼠が、顔を横切る汗さえぬぐうことを忘れてそのパワーを誇示していた。薄ら笑いすら浮かべて。
「ソニック、オレの勝ちだな」
全力、いやかなり必死だったんだろう? でなきゃとっくに勝負はついてる。
「……で、俺を、どうするって?」
体勢は絶望的でありながら、なぜか余裕の表情を見せるソニックに、シルバーは苛ついた。と同時に増す「征服欲」、「蹂躙欲」。思わず打ち消すように雄叫ぶが、喉仏が震えてしまう。ソニックがそれに、気づかないわけがない。

「やれば」
「な、」
「やりゃいいじゃん、俺、お前の力で動けないし、見てみな、足も閉じられない。チャンスだろ?」
唾を吐き、笑ってやる。正義感強いやつにこういう挑発は効果大なんだ。
「……ば、馬鹿にしやがって!」
二三度擦り上げて勃たせたペニスを、ソニックの狭間に宛がう。尻尾を持ち上げて挿入を促す。そうやってる間に、ソニックを押さえつけていた力は何処へと消えてしまったけれど、ソニックは知らないふりをする。

シルバーは上に立った優越感に浸りつつ、でも少し悔しそうに腰を振っていた。
「畜生、ちくしょう……っ」




囚われたのは、ソニックでなく。





080819shanghairuby
しるそにか。しるそになのか。


時空を超えるというのは、なかなかどうして奇妙なものだ。
一度経験したなら忘れられない。それほど強烈な体験だと思う。

頭は始終ぐらぐらと回転を加えられ、さっきからずっと乗り物酔いのように気分が悪い。
あちこちから引っ張られる感覚がする。意識をしっかり保っていないと、どこかに私を落としてしまいそうな気がする。
慣れているのか、彼は悠々と地表のない世界を飛んでいる。

「意識を保て」

そうだ、意識を保っていないといけないと、彼にきつく言われたばかりだった。

「目を閉じるな。持っていかれるぞ」

視覚は全て灰色に塗りつぶされ、上も下も分からない状態だ。
これなら目を閉じていてもいなくてもいっしょじゃないか、と思ったけれど、彼は怒るととても怖そうなので言わないことにする。
会話は必要最低限で済ませていて、無駄口は一切叩かない主義らしい。楽しい時空の旅はもう半ば諦めていた。

雲の中に入ってしまった飛行機がこんな状態に陥ると聞いている。
まだ電子機器の発達していない昔、これに迷い込んでしまったせいで天地が逆さまになり、海に散華した飛行隊員がたくさんいるという。
もっとも、何かの本に書いてあったと記憶しているだけだから、「聞いた」というのは正しくないかもしれないけれど。

重力の方向すらも分からない、空の上のホワイトアウト。
彼らは白い牢獄の中で、いつ抜けるかわからない無限の刹那のあいだ、どんなに不安だっただろう。

だけど私には彼がいた。
彼は命綱であり、頼れる羅針盤でもあった。彼はこの浮草のような肉体を支え、しっかり導いてくれる。
冷たい態度のくせに、手のひらだけは生命のエネルギーに溢れているのが伝わってきて、
それのお陰で優れなかった気分も少し安らいできた。
迎えにやってきてくれた頃には眩しすぎた金色も、今は優しくさえ感じた。

彼は何も言わないけれど、私は彼の名を知っている。

「ありがとう、帰りもよろしく頼むわ」

返事はない。彼は、ただそこに立っていた。
けれど私は彼は絶対に迎えに来てくれるとを知っていたし、それに私は行かなければいけない。
友人たちが待っている。



○○>こんばんわー


思い切り吹っ飛ばされて受身を取ることすらままならない。
壁に叩きつけられたはずなのに、次の瞬間には棘を捕まれ宙吊りにされる。
彼の双眼が自分のそれを覗き込んできた。視界が霞んでいるのは眼球が潰れかけているのだろうか。それとも先程から止まらない血が目にでも入ったか。
「綺麗だな」
いつもよりオクターブ下がった声で彼が笑う。棘を掴む右手に反比例するように、頬へと添えられた左手は優しかった。慈しむような指先は、血と体温で温かい。瞼をなぞる様に触れる指の感触は分からなかった。
「よこせよ」
彼が言って、次の瞬間ぶちりと音がした。思いのほか痛みは少ない。視細胞はとっくに死んでいたらしい。所詮器に過ぎないんだなぁと人事のように思う。

眼球だって何だって、好きなだけ抉ればいい。
持てる分全部くれてやって構わない。
ただ、死にたくはないと思う。

「腕でも足でもアンタにやるよ。でも殺すな」
「命乞いならみっともないなぁ?」
「違う」
見えなくなった右目が彼の手の中にある。遠近感が狂った世界で、腕を持ち上げ彼へと伸ばした。
如何してこんなことになったのか、もっと早く気づけたら。
そう思うのはエゴだから、代わりに全部持っていけ。



「悲しいんだろ」

独りにして、ごめん。





背中に伸ばして抱きしめた手は、彼の心に届いただろうか。





2008.08.19

全てを無に帰すかのような威圧感に、シルバーは不覚にも萎縮した。
空の色を映すあの青は一滴の闇を綯い交ぜにするだけで、こんなにも歪んでしまうのだろうか?

「ソニック……おまえ、どうしたんだ…?」

音速を誇るその足に空気が切り裂かれる。ソニックの脚に押し出された透明な体積は真空の刃となってシルバーの頬を掠った。
チリ、とした痛みを感じ、頬に手を当てれば真白の手袋は真紅へと染まっていた。

「Ha、やる気ねぇのか?
お前、死ぬぜ?」

普段の軽口を叩いているように見えるが、その瞳は雄弁にその言葉が本気で発されていることを告げている。それに、普段の彼では死ぬ、などと簡単に口にはしない。
何とかして彼を止めなければならないことだけは、本能的に理解していた。
それなのに、この雰囲気に気圧される。
見たこともない彼の様子に、全てをもっていかれそうになる。

「ソニック、見損なったぞ!お前がそんな奴だったなんて」
「俺は俺だぜ?好きにやって何が悪い」

瞳を逸らしたくなる衝動に駆られながらも、真っ直ぐに相手の視線と交差させる。
紅くなった手袋が、淡いエメラルドの光を放つ。




例え本当に俺が死んでしまうとしても、
死んで彼が戻るのなら構わない。
風の化身の遍く者の希望である彼に、
何としてでも元に戻さなければ。


2008.8.19 otowa.s


あんた、何やってんだ!

輝くインディゴを青黒く濁らせ、身にまとった炎は怒りのマイナスエネルギーで燃え盛っている。
はじけ飛ぶ火の粉をわずかに受けるだけでも、指の先までびりびりと彼の怒りでしびれるようだ。

たしかに、彼の対峙するものは巨大で邪悪で禍禍しく、その犯した罪の大きさは底知れないのだろう。
だが、今、時空を越えて、自分の時代を救うために宿敵を追うこの身体なら、紫の肌の巨人が背負ってきた悲しみや絶望も見渡すことができた。
同時に、ともに戦う友人の、近い未来に起こるはずの出来事も、まるで映画フィルムのコマを追うように見えてしまった。
指輪に封じ込められた小く透き通る花びらが散っていく様も、その花が散る刹那に呼んだ名前も、そしておそらく対峙するあの二人にはそれが届かなかったことも。

これから始まる大勝負を止めようと乗り出した身を静かに引く。
そうだ、オレにはオレの役目がある。
彼らのことは彼らが始末をつけるだろう。
世界を救うことに比べれば、ただのケンカだと自身に言い聞かせ、シルバーはソラリスのいる自分の時空に飛び去った。


「くっくはははは!いいぜ!最ッ高にハイって奴だ!」

英雄と呼ばれたハリネズミが、灰色の工場で高笑いをあげている。足下には、かつてのライバルであるシャドウが横たわっていた。
血だまりがじわりと広がっていく。銃弾をも弾くシャドウの皮膚を貫いて、白い手袋が赤に染まっている。

「イイ!イイぜ、この力!何もとかもとが打ち壊せちまうこの力!」

彼、ソニックは血に濡れた手袋をしゃぶりながら、その表情を狂気で満たしている。

「そこまでだ。ソニック・ザ・ヘッジホッグ。」

鉄の匂いに顔をしかめながら、窓から白銀のハリネズミがソニックをにらんでいる。

「HA!誰かと思えば、シルバーじゃないか!」
「オレは…。アンタを止めるよう、頼まれているんだ。そう、そこのシャドウに。」
「止める?冗談を言うなら、夏休みの宿題を終わらせてからにするんだな。」
「あいにく俺の宿題はアンタだ、ソニック。」

ソニックが狂喜に歪む。にやりと笑った。

「そうかい!ならあの世で永遠に夏休みを過ごすがイイさ!」
「ああやってやるとも!シャドウをボロボロにしたアンタを、許す訳にもいかないんでね!」


「知らなかった。」

シャドウがソニックに背を向けて言った。漆黒に浮かぶ白金のボディがオーラを揺らめかせている。

「守る為に戦うという事、こんなにも、重い物なのだな。」
「そうさ?守る為の戦いは、負けられないからな。」

醜い大トカゲが、吠える。レーザーを放ち数多の機雷を浮かべても、このハリネズミ達の進攻を止める事は不可能だった。
シャドウとソニックは目にも止まらぬ速度で、バイオリザードの腫瘍を叩きつぶしていく。

「守らなければならない、負けられない。なのに、そんなプレッシャーは感じない。何故なんだ。」
「当たり前だろ?俺とお前、二人で抱えてるんだ。世界を救うなんて訳ないさ。頼りにしてるぜ、相棒!」

シャドウは、そうだな、愚問だった。と笑った。二匹のハリネズミは、今まさにリザードを叩き潰しにかかった。

「化け物め!パーティは終わりだ!」
「消えろ!プロフェッサーの怨念とともに!」


同じスーパー化でも体への負荷は違うのかという話をしたことがある。



「ん・・・いや、負荷自体は同じだと思うぜ。あれやるとしんどいし」
「そうは見えないが」
「長丁場は精神的にきついんだ」
彼はそう言って手首をさする。そこには何もついていない。肉体的ではなく、精神的という言葉が少し意外だった。
俺は多分つけない方がいいんだと彼が笑う。何故と問うと、忘れないためにと抽象的な答えが返ってきた。
「戦っている内にさ、何を守りたいとか、悲しいとか痛いとか、全部忘れて壊したくなる」
「・・・それは」
「思考が食われるんだ」


そしたら俺はどこに帰ったらいいんだろうな?


笑って誤魔化そうとする本音に気づいてしまうのは、結局本質が似ているからだ。
誰も彼を止めてはくれない。
その事実が、彼の自制に繋がっている。
腕の飾りの有無は、その具体例に過ぎない。


後先を考えずに全力で戦うのは自分を省みない行動だから、責められることには慣れている。
それが出来るのは自分が帰ることを考えていないからだろう。
だけど彼に帰る場所が無くなれば、そもそも戦う理由も無くなるのだ。


背負うもへの自覚が人を思い止まらせるなら、
何も持たない自分には装飾品の方が相応しい。





2008.8.19
<< 前のページ  [17]  [18]  [19]  [20]  [21]  [22]  [23次のページ >>
最新コメント
[10/15 章屋]
[10/09 恵梨香]
[08/20 なる]
[08/04 ゴチ]
[08/04 ゴチ]
ブログ内検索
フリーエリア
バーコード
忍者ブログ [PR]

Template by テンプレート@忍者ブログ