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雨-
この天気、万人は嫌いのようだが、自分はどちらかと言うと好きだ。
雨は大地の恵とも言える。
晴れの日だけでは、植物は育たない。
雨が降る事で、大地は潤い、草木が生えるのだ。
草木が育たないと、食物連鎖の基本が崩れてしまう。
そうなれば、あっという間に、地球滅亡だ。
また、雨は自分が放つ臭い、痕跡など色々なものを洗い流してくれる。
自分が専門としている諜報活動にはうってつけの日なのだ。
雨によって発生する湿気で、透明になる能力に支障は出るが、それはやむを得ない。
しかし、そんな事をべクターやチャーミーに言うと、『変なヤツ』と言う。
なんて失礼な!
やはり、自分がいなければ、この探偵事務所は成り立たないと思ってしまう。
おっと、まだ書いていない事があった。
なぜ、自分が雨が好きなのかと言うと、当然、上記の理由もあるのだが、
雨が降り終わり、雲の合間から差し込む太陽の光が美しいからだ。
また、雨の振った後の空にかかる虹もなんとも、美しいものか。
これらは決して、晴れの日だけでは存在しない、雨が合ってこその自然の芸術品なのだ。
この奇跡とも言える光景を、間近で見る事が出来る我々は、この地球に生まれた事を感謝しなければならないだろう。
エスピオ・ザ・カメレオン
「ベクター、またエスピオがへんなものをかいているよ~」
「ハァ、アイツも懲りねぇモンだなぁ。これぐらいの熱意があるなら、機械オンチを直しやがれよ!」
初めて彼と剣を交えた焔が燃え盛るこの地にも、雨は降る。
いつも曇っているから、いつ雨が降り出すか、タイミングが計れない。
そして今、私は雨宿りを余儀なくされている。
「・・・参ったな」
生温い空気に湿気が付加されては、汗も掻いているし流石にだるくなる。鎧が蒸し暑い。
咄嗟に入った屋根の下から少し顔を覗かせる。そこそこ強い雨は、いつ止むか定かでない。
「・・・皆と夕食の約束があるというのに・・・」
王・・・ソニックが今朝、半ば強引に取り付けた約束だ。
(ランスロットもガウェインもパーシヴァルも、もちろんマリーナも!今日は一緒に食べようぜ、な?)
勿論嫌な訳はない。むしろ喜んで、と言いたい所だったが、私だけが出れないとなると、王は残念がるだろうか。
約束の時間まであまり余裕はない、のに、ずっと足止めを食らいっぱなしだ。
いっそ濡れて帰ろうか。欠席よりは遅刻のほうがよっぽどいい。
覚悟を決めて、駆け出そうとした。
「パーシヴァル!」
振り向いた先には、駆けてくる蒼穹の笑顔と、手にした二つの雨具。
たまには・・・雨もいいかもしれないな。
○月×日
今日はとっても嬉しいことがあったわ! 多分生まれてから最高の一日よ!
私がベッドから起きれるくらいまで良くなったとき、おじいさまが一匹のハリネズミを連れてこられたの。
赤毛の混じった、黒いハリネズミだったわ。名前はシャドウ。15歳ですって。
私をじっと見て、「こんにちは」って挨拶したのは、お人形みたいでとてもかわいらしかった。
体は成長しているけれど、心はまだ赤ちゃんのようなものだから、いろいろ教えてあげなさい って、おじいさまがおっしゃっていたわ。
うふふ、少し先に生まれた私はシャドウのお姉ちゃんね。
これからよろしくね、シャドウ。
○月×日
今日はシャドウにアークの中を案内してあげたわ。
先生からはベッドからでてはいけませんって言われてたけれど、
シャドウのお姉さんだもの、このくらいへっちゃらよ。
私のお気に入りの場所は、シャドウも気に入ったみたいだった。
私の大好きな地球が見れるばしょだもの。今日もとってもきれいだった。嬉しいわ、また来ましょうね。
○月×日
また新しいお薬を増やした。
お医者の先生は申し訳なさそうだったけれど、私の体を治すためには仕方ないわ。
○月×日
研究員の人たちに貰った花の種をまく。
土はないので、シャーレの上。小さいけれど、かわいい花が咲くんですって。
はやく病気がなおりますように って、ベッドのそばにおいておいた。
できたらシャドウに見せてあげるわね。
○月×日
シャドウはすごいわ。もう難しい単語が読めるようになってるのよ。
私は薄い絵本を読むのでさえ、もっとかかったのに。
シャドウは天才ね! おじいさまみたいな学者になれるんじゃないかしら。
○月×日
シャドウの知識がなぜ増えたのか分かったわ。
こっそり夜中に研究室で勉強をしているみたい。ずるいわ、なんで教えてくれなかったのかしら。
ビデオを見たり、跳んだり走ったり、検査したりしている と言っていたわ。
とても楽しそうね。私もシャドウみたいに体が丈夫だったらいいのにな。
○月×日
シャドウの様子がなんだかおかしい。
とても疲れているみたいだったけど、それを言ったら
シャドウに「マリアは心配しなくていい、それよりは自分の心配をしてくれ」って、髪を優しく撫でられて、笑ってごまかされた。
私には分からないけれど、体を大事にしてほしいわ。
○月×日
今日はお客さんがたくさん来たみたい。知らない人が何人かいたわ。
おじいさまがとても難しい顔をしてらっしゃった。
シャドウの疲れもだんだん酷くなってきてているみたい。
とてもお話できるような雰囲気ではなかったわ。少しさびしい。
○月×日
今朝はちょっと調子が良かったから、こっそり研究室を覗いてみたの。
私、ちょっと信じられないものを見てしまった気がする。
シャドウが、テレビの画面に向かって銃を使っていたわ。
人が襲って来るのを、ただひたすら撃ち続けていたの。とても慣れていて、初めて使ったとは思えなかった。
シャドウ、あなた、こんな勉強をしていたの?
○月×日
少し間があいてしまった。
ちょっと咳がひどい。でもシャドウがときどきお見舞いに来てくれるからへいきよ。
またしばらく治すのに時間がかかるかもしれないけれど、待っててね。
元気になったら、また展望台に行きましょう?
○月×日
今日はちょっと早起きしたの。まだベッドからはでられないけれど。
外がなんだか騒がしい。
ノックの音がする。
はい、い ま
といいながらソニックは持っていた大きな宝石を僕へ投げてよこした。
王と呼ばれるのを嫌い、ソニックと呼べと命令されては仕方がない。
大きく弧を描いて飛んでくるそれをやすやすと受け取ると、僕はその美しい宝石に目を奪われた。
「これは・・・・」
世界中どこを探せば、こんなに力の溢れた石が見つかるというのだろうか。
カットされたその石は、どの宝石よりも強い魔法の力を感じることができた。
マリーナやガラハッドほど、魔法の力には長けてはいないが、僕も魔法の一旦は使うことができる。
ましてや、このような力の溢れた石があるとは脅威だった。
「これはいったい・・・どこで手に入れたのだソニック」
「ん?これは俺が住んでる世界にあるもんだよ。今日はたまたま持ってたからさ。持って来ちまったんだ。」
ソニックは数日こちらの世界に滞在しては帰るという、気ままな生活が気に入っているようで、こちらのものを持って帰ったり、あちらの世界のものを持って帰ってきたりと、たいそうこの状況を楽しんでいる様子だった。
「こんなものをこちらの世界に持ち込まれては困る・・・! 君はこの石がどれだけの力を持つのか、感じられないわけではないだろう?」
「いいじゃないか別に 減るもんじゃないし」
「減る所か、こちらの世界の魔法の力が増幅されるかもしれないぞ。コレだけの力がそちらの魔法のない世界で使われているなら、こちらの世界でどういう影響が・・・・」
と、言い終わるか言い終わらないかのうちに、少し離れた場所からドカーンという音と共に、大きくきのこのような煙と、女性の悲鳴がセットになって聞こえてくる。
「・・・・・・・あ・・・さっきマリーナに一つ貸した・・・・」
「なっっ!!何だと?!何ということを!!」
「いやあ、だって、研究してみたいです 王様! なんて、キラキラした目で言われたらだめなんて言えないじゃないかー」
肩をすくめて、いたずらっぽくごまかしても無駄だ。
「たわけ!早くいって手助けせんか!」
王の手の中にある剣が大声をあげる前に、僕は走り出す。
先ほど受け取ったこの巨大な力のある石の存在を手に感じながら、僕は王より一足先に、大きな煙の前で呆然となっているであろう、若き宮廷魔術師の下へと急いだ。
まるで絶え間なく、音楽が流れている様だった。この空間、そし
てオレ自身の鼓動が。
オレの知らない、見た事も無い、どす黒いオレの姿に、困惑を覚
える。
あの化け物に対する――怒り?。
何時もと勝手が違う、集中できない。まるでリングの力がオレの
限界などお構いなしに、力を流し込んでいる様だった。
自分自身でも恐ろしくなる。この込み上げてくる激しい感情に、
身体が破裂しそうだった。――狂暴な魔神の様に。
抑えが効かなくなれば、あの化け物の様に膨れ上がり、やがては
全てを消し飛ばすのだろうか?。
駄目だ、とにかく、とにかくこの力を解き放たないと、あの化け
物にも勝てない、オレ自身もおかしくなる。早くこの力を制御しな
いと。
突如、イレイザー・ジンの成れの果ての、化け物の爪が襲い掛か
った。胸元を深く切り裂き、弾き飛ばされる。
“ふざけやがって…”
“出来損ないの化け物が”
“オレに逆らうか!?”
焦りよりも速く、思いがけない言葉と感情が一気噴き出した。同
時に全身を包み込むような高鳴りを感じた。――最高にハイな気分
だ。
そしてオレは突然理解した。――あぁ、これはこう言う事か。
気のせいとばかり思っていたが、音楽は確かに流れているんだ。
オレのリズム、今のオレのリズムと言うべきか。
そういえばコイツには、随分と姑息に立ち回られた物だ。
このオレに、虚仮威しをして、彼女を苦しめ利用して。
上等だ、ここは魔神らしく、派手に荒ぶってやろうじゃないか。
「OK、ロックンロールだ…クソヤロー」
胸を流れる血を一舐めする。最高にハイな気分だ
どんな生活感の無い部屋でも、自分の部屋など持ったことの無かったオレには、その部屋の主の薄い匂いを探してしまう。
留守番していろ、と言われたけれど、ここには遊べるゲームなんかも無さそうだ。好きにしていいってことは探検はかまわないのか。
まず目についたのはくもりガラスの窓。外の景色が見えないんじゃ意味なんて無さそうだ。GUNの部屋だから覗かれちゃまずいんだろうな。でも好きにしていいって言ったから大きく開け放つ。窓枠にぶら下がったカーテンがパラシュートみたいに飛んでいく。
それからキッチン。食器はスチールみたいなカップと白い陶器の皿が何枚か。きっと本人と来客の分だけ。砂糖に塩に香辛料がきっちり並んでる。冷蔵庫ではケチャップが上向きに、マヨネーズは下向きに。
アルコールは入ってない。ちょっと残念だ。勝手にコーラを貰って一息に飲み干した。
ランドリーからバスルームも覗く。きっとここは部屋の管理人が掃除してるんだろう。シャワーの下の排水溝に黒以外のトゲが落ちてないか念入りに調べてみた。何もない。じつにざんねんだ。
思いついて、自分の白いトゲを一本抜いて、排水溝に差しておく。
またリビングに戻る。風が通り抜けて気持ちがいい。
ソファーに座ると、沈むように柔らかなクッションに包まれて、つい眠くなってしまう。
テレビでもつけて待ってようかな。
「こんな場所でうたた寝していると身体を冷やすぞ。ベッドで休め」
ここの家主は、自分のテリトリーではこんな声を出すのか。ここが安息の場所。永遠ではなくても。
眠くて、身体が動かない。クッションを抱きしめてその温もりを手放さずにいたら、ため息の後で抱きあげられた。
・・・そういえば、ベッドは探検してなかったな。
いい匂いだといいけど、きっと彼の匂いは薄いから、オレの匂いを移してやろうっと。
ママの作るケーキは世界でいちばんなんデスよ。
無邪気に笑みを浮かべるその少女の表情が、遥か彼方の記憶へとリンクする。
おぼつかない手で一生懸命に生クリームの入ったボウルを支えては手にしている泡だて器をくるくると回して液体状になっているそれに空気を混ぜる作業を続けている。
広いキッチンの机の上に広げられた小麦粉、篩い、量り、卵、砂糖、瑞々しい苺は蔕の部分を綺麗に切り取ってそのままとスライスにした状態のものに分けられていた。
甘い香りが広がっている。鼻腔をくすぐるその香りは無意識に口元を緩ませた。
自分だけでは支えきれない重さになっているそれを押さえつけようと躍起になっているが、それ以上は無理なのかほんの少しずつ手前へとズレを生み出していっていた。
思わず手を伸ばして淵を支える。ハシバミ色の瞳が大きく見開かれ、驚きが隠せない様子だったがそれも束の間、花開くように大輪の笑顔が少女に浮かべられた。
邪魔をしなかったことに安堵の息が漏れる。手伝わせてくれないかという申し出は是も非もなく受け入れられた。
腕全体ではなく手首のスナップを生かして泡だて器を回す作業を続ける。
ボウルの下には濡れた布巾を敷いた。これで滑ることもそうないだろう。
暫くすれば慣れ親しんでいた腕のだるさが遣ってくる。
少女の細腕には辛い作業である筈なのに、弱音の一つも零さずに心底楽しそうな笑みを浮かべていた。 そんなところまで、彼女とそっくりで。
篩いに掛けた小麦粉が深さを伴ったボウルの中へとさらさらと音を立てながら降り積もっていく。それはまるで粉雪のようだと感想を漏らした。
隣には溶けた卵とバターの混合物。砂糖を混ぜれば黄色が白身を帯びて淡い色へと変化する様をキラキラとした瞳で少女は眺めていた。
チン、という軽い音。既にフルーツと生クリームの準備は万全だ。
デコレーションはどうしようか。美しく飾られたそれは得意分野だが、それよりも少女のやりたいようにやってみたらどうだろうか。不恰好でも少女の母親は嬉しそうな笑みを浮かべるだろう。プロフェッサーがそれを見たときのように。
褪せたセピア色と現在の鮮やかさが
眩しいくらいに折り重なって柔らかな光を灯している。
出会いはいつも突然であると聞く。確かに彼女と出会ったときも突然だった。
戦いに身を投じているときに初めて会った筈の彼女は、なぜか僕のことを知っていた。
そんなことをふと、思い出す。
「あなたは覚えていないと思うけどね。あたし、最初間違えてあなたに抱きついちゃったのよ」
ソニックと似ていたから間違えちゃって、と笑う彼女に、少々季節の早い麦藁帽子は良く似合っていた。
「抱きついた?・・・僕にか」
「ええ、びっくりしたわよ。最初見たときは本当にそっくりでわからなかったもの」
からん。熱さで溶けたアイスティーの氷が崩れて音を立てた。
「・・・何故、僕と彼は似ていると思う?」
「え?・・・うーん、何でかしらね?血が繋がってるとは思えないし」
少し日が陰る。真夏日に雲は重要な役割を果たす。
「でも、似ているおかげで君は真っ先に僕のことを覚えたわけだ」
「そうね、あれは忘れられないわよ」
生温い微風。一足早い夏、今日は一段とアイスコーヒーが美味しく感じる。
「で、今こうやってあなたとばったり出会って話し込んでいるのも突然の出来事だったわけよね」
「そう、だな」
何処からこんな話に派生したのだったか。
・・・ああ、こんなところで出会うなんて偶然ね、と言う彼女の一言からだ。
女のお喋りはすぐ転々とするが、楽しそうに話されたなら飽きるものではない。
「・・・あれ?何の話してたんだっけ?」
「こんなところで会うとは奇遇だな、と」
「ああ、そうね!シャドウはどうしてこの町に?」
「GUNの諸用だったのだが、もう済んだ」
「あたし、これから買い物の続きに行こうかなって。シャドウ、良かったら付き合ってくれない?」
・・・突然の出会いも、悪くはない。