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今想えば

時空を超えたことは数あれど、
カオスエメラルドの力をもってしても、次元の壁というものは果たして超えられるのだろうか。

その女性はティカルと名乗った。白く、繊細な文様が入った民族衣装と、燃えるような赤毛。
彼も今まで何人かの女性に出会ったことはあるが、そのなかでもとりわけ意志の強そうな瞳であると、シャドウは思った。
侵入者であるところのシャドウに全く驚きもせず、彼女はいやに落ち着き払って言った。
まるで、シャドウが来ることを初めから知っていたかのように。

「どうです、お茶でも」

チャオの手によって、ソーサーに乗ったカップが目の前に差し出された。
シャドウは反射的に手を伸ばすと、スーパー化のエネルギーが作用したのか、湯呑みが弾けとんだ。
今までティカルの傍らで黙っていた、チャオの親玉に睨まれた。チャオが怯えたが、破片で怪我はなかったようだ。
思わず手を伸ばそうとして、ティカルに制止された。

「いえ、そのままで結構」
「・・・」
「あなたを呼んだのはほかでもありません」

次の瞬間、彼女は思いっきり破顔して言い放った。

「ナックルズさんの、今年のワインとジャムを届けてほしいんですが」

思うに、それは「おつかい」だとか、そういった類のものだったのかもしれない。
そして、たまたま傍を通った彼がとばっちりを受けてしまったのだと。

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