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わたし めかえろ ワカリマセーン
目を覚ました時、複数の何かが私を覗きこんでいた。カメラの焦点を絞り、それが何者かを捕捉する。
判を押したように同じハリネズミが、10、20。驚いたことに、かつて私が率いた同胞達だった。
彼らの名前はよく覚えている…シャドロイド。彼らの皮一枚下こそ金属と回路が通っているが、外見は生きているそれらと変わりない。
人間が見たなら気味の悪さを感じるのかもしれないが、これはロボットにとっては当たり前の風景だ。
同じ容姿、同じ規格、同じプログラム。自分というものが埋没する環境。それを変えたくて、私は蜂起したのだ。
……しかしながら、彼らは以前会った彼らとは違った。
奇妙というか、実に奇抜な格好をしている。部品の一種だろうか、シャドロイドは人間の纏う服のような何かが取りつけられている。ベースカラーは黒。腰にヒラヒラとした白い布が巻かれている。膨れた肩と、アンテナだろうか、頭に平たい角があるのが特徴的で、結ばれた紐があちこちに散見された。
次に、首のない自分の体が見えた。そこから色とりどりのビニル樹脂に被われたコードが引かれている。地面にはコードという無数の蛇が這いつくばるばかり。
やっと私は状況を把握した―――私は解体されている。
ひとりのシャドロイドが手を上げた。手にはペンチ。これは金属紐を切断する道具だ。
ペンチが静かに下りてくる。ぶちり、ぶちり。
感覚回路を切断された。プツン、と電子脳の世界が遠ざかった気がした。外界から読み取る情報の新鮮味がなくなるような。
シャドロイドは表面のビニールを剥がし、切断面を手際良く処理する。
なにかコンプレッサーのような、機械の塊に繋いだとき、世界に色が戻ってきた。
強烈で、鮮烈な、
「……!! …………!!!」
焼けつくような感覚が体じゅうを走った。視神経が光に塗りつぶされる。
あの一件以来声を封じられてしまったため、部屋に響くのは錆びついたモーター音のみ。
それも長時間続けられると、どこか矯正じみているように聞こえる。
無表情に見つめてくる彼らの瞳からは、やはり無機質なものしか読み取れない。彼らの意図が見えない。まったく同じ色の視線に、私は初めて恐怖した。