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ケダモノは卑猥な夢を見る。





自分でも止められない身体の変化を、誰かに迷惑かけまいとケダモノは一匹闇夜を彷徨っていた。
人目につかないところ、誰にも会わないところ……どんどん突き進んでゆくと、気づけばあたりは森の中。肉食獣の気配に、小さき住民たちは草枝を揺らしながら逃げてゆく。
今夜はここで明かそうか。蜘蛛の巣を払い顔を上げると、湖畔に出た。

ぽっかりと口をあけたような暗い水面に満月が落ちている。そういえば自分のこの姿をまじまじと見たことがない。ケダモノは恐る恐る水辺に前足を下ろした。

「……誰だ」

これは、誰だ。
裂けた口、鋭く突き出た牙。逆巻く毛並みからは青い針鼠の姿が思い出せない。

目を逸らし、掻き消すように水を切る。視線を感じて再び水面へ顔を向けると、今度は金色に尖る針鼠がいた。

どうしたことだ、言葉にできない敗北感。どれも同じ、「自分」であるというのに。


ケダモノは呼吸を乱す。苦しいままならいっそ、水に落ちてしまおうか。

(おいで)
俺を呼ぶな
(さぁ)
俺を、呼ぶな
(誇りを、失いたくないんだろう?)

箍は外れた。ケダモノは金の光に包まれ、おちてゆく。


「う、ぁ、ああ、っが、あああ」
(叫べばいい、悲鳴も、嗚咽も、体液も欲も、全て出してしまえば、全て元に戻る)
おかしい、これは、夢だ。自分に犯されるなんて。俺は自分に犯され、あろうことか悦楽の喘声を上げている。

掻き分けた剛毛の中心を、酷く出入りしている、神々しいような自分。
だらだらと涎やら精液やら腸液やらを垂れ流す、ケダモノの自分。

このまま何もかも吐き出してしまって、紙のようにひらひらになってしまって、金色の光で燃やしてしまえば、その灰を風に捨ててしまえば、俺は俺に戻れるのだろうか。





「ソニック」
忘れそうだった、名前。目が覚めて、股間に散らかった精液を見下ろして思い出す。





080820shanghairuby
「チリドッグ」
「花」
「ご機嫌なサウンド」
「仲間」
「ライバル」
「地平線まで走ること」
「そのときに見る朝陽」

「「自由」」

「Hey,どこからどこまで全く同じだなぁ」
「当然だろ? 自分なんだから、」

「さ!」と、満月と同じ色に鈍く輝いている『ソニック』がそこいらにある缶を蹴り上げた。
真上に跳ね上がったそれを追いかけるように光が閃めき―――気づけば、それは毛むくじゃらの『ソニック』が振り下ろした爪に両断されていた。
ひゅう、ともう一方が口笛を吹く。

「お見事! やるじゃないか。便利そうだな、ソレ」
「だろ? 結構気に入ってるんだぜ」
「にしても、エッグマンのやつ、どうやったら俺をこんなにできるんだ? この胸、まるでシャドウみたいだ」
「NON! 触るなって、熱いだろう!」

オオカミは焦げそうになる毛皮に気づき、慌てて振り払った。
黄金色の彼が、指を天に向かって立てた。

「だが問題がひとつあるな」
「?」
「そいつでレコード引っ掻いたらいくらなんでもブッ壊れちまう」
「あっ! mmh...そいつは困ったな・・・」

真剣な顔をする『ソニック』に対して、『ソニック』はくつくつと忍び笑いをした。

「それは俺もいっしょだよ。溶けちまう」
「なんだ、やっぱり一緒だな」

たとえ、どんなに身体的に制限がかかろうと、
『彼』の心が自由なら、この世の誰にだって『彼』を縛ることなんてできやしない。
同じ自分だとは思えない。
普段の音速など、願ったとしても出せやしないだろう。

爪が、硬質化した腕が、薙ぎ払う肉の感覚さえも生々しく。

「おっと、そこまでだせ?」

見上げれば、金色に光る紅玉の瞳の己が映っていた。

「悪い奴には首輪でもつけやらないとな?」

悪戯そうに笑みを浮かべる金色の手には、鉄製の枷が握られていた。
ソニックは怖かった。月に恐れをいだいたのだ。月を見た途端に訳がわからなくなった。そして気がつけば、辺り一面はメチャメチャ、返り血がべったりと自分をそめていた。
月を見る度にそれは起こった。どうあがいても月は彼を逃しはしなかった。
彼は走った。考えたくないから走った。夜、自分以外の何かが自分を動かしているのを想像して、おぞましくおもった。

彼はカオスエメラルドを求め走った。スーパー化すれば、この恐怖を取り去る何かが見つかるかもしれない。
彼は初めて自分以外の何かに懇願した。

彼は走った。カオスエメラルドは何も答えてはくれなかった。結果彼は夜から逃げるように、今も昼を飛び続けている。
そこに英雄の影はなく、安堵と怯えの入り交じった顔が死んでいるのみだった。

新調した手袋がちょっと硬い。慣れるまでは仕方ない、と溜め息を吐きながら脱ぎ捨てた。
空が緋い。もうひとりの自分に交代する時間までそう無いだろう。

「嫌いなんだよなぁ、あの感覚」

手首の白い毛をなでつけながら表へ出る。

「力はすごいもんだけどさ」

エメラルドの恩恵を受けていた金色が吸い取られ、全身に超感覚がビリビリ走っていったあの体験は忘れないだろう。

ざわざわと心が疼いてきた。
…近い。



「お手柔らかに頼むぜ、…『ソニック』さんよ」
今思えば、マリア以外に彼女のように優しい女性(ひと)は居なかったのではないだろうか。
眠っている間に、しばしば此処ではない何処かに居る夢を見た。

人類の罪の箱舟、アーク。
その中の努力の結晶、シャドウプロジェクト。
不老不死という、人類の最果てを根本的に覆すような、終焉を壊す計画。

カオス。チャオの突然変異体。
人工カオス。チャオを無理やりに突然変異させた、異形の化け物。
カオスエメラルド、マスターエメラルド。
奇跡の宝石の力を自在に操ことが出来たのなら、人としての終焉すら回避できるようになると思ったのだろうか。

生き物というカテゴリーにすら入れられることのない彼らを慈しむように、大切に大切に守った彼女。
種族の抗争に巻き込まれ、悲劇の終焉を迎えた彼女。

僕に夢を託した、たった一人の僕の聖母。
そんな君も、あの箱舟の上ですら生きることはままならず、人類の薄汚い感情のなかに押し潰されてしまった。

どうして彼女たちが、傷付くような世界を守らなくてはいけないのだろう?




そう、思っていた筈なのに。

『お願い シャドウ』


「シャドウ!」

白金に輝く腕から、黄金のリングを取り去った。
ソニックの腹に拳を撃ち込み、金色を失った彼を置き、宇宙の崩壊の根源へと、真っ直ぐ向かっていく。

優しい彼女たちがこの世界の続きを望むなら。
僕はこの身を賭して、彼女たちの愛するこの惑星を守ろう。


















2008.8.20 
今想えば

時空を超えたことは数あれど、
カオスエメラルドの力をもってしても、次元の壁というものは果たして超えられるのだろうか。

その女性はティカルと名乗った。白く、繊細な文様が入った民族衣装と、燃えるような赤毛。
彼も今まで何人かの女性に出会ったことはあるが、そのなかでもとりわけ意志の強そうな瞳であると、シャドウは思った。
侵入者であるところのシャドウに全く驚きもせず、彼女はいやに落ち着き払って言った。
まるで、シャドウが来ることを初めから知っていたかのように。

「どうです、お茶でも」

チャオの手によって、ソーサーに乗ったカップが目の前に差し出された。
シャドウは反射的に手を伸ばすと、スーパー化のエネルギーが作用したのか、湯呑みが弾けとんだ。
今までティカルの傍らで黙っていた、チャオの親玉に睨まれた。チャオが怯えたが、破片で怪我はなかったようだ。
思わず手を伸ばそうとして、ティカルに制止された。

「いえ、そのままで結構」
「・・・」
「あなたを呼んだのはほかでもありません」

次の瞬間、彼女は思いっきり破顔して言い放った。

「ナックルズさんの、今年のワインとジャムを届けてほしいんですが」

思うに、それは「おつかい」だとか、そういった類のものだったのかもしれない。
そして、たまたま傍を通った彼がとばっちりを受けてしまったのだと。

ソニックが一度だけ、人工のカオスを見ていて、つぶやいたことがある
「こんな物見たら、あの娘はなんていうんだろうな
彼が指す、あの娘 というのが、どこの誰かなど、知りたいとは思わないが、
彼らしくないその態度に、少し興味が沸いたことは事実だった。

「見せたくない相手でもいるというのか
「ま。もう見せたくても見せられやしないし。見せたらきっと悲しむのはもう、目に見えてるし。

そんなことより・・・・

両の手からあふれる七色の光に包まれる。
体の底から沸き立つような力の波に、思考も感情も飲まれそうになる。

ソニックの力に呼応するかのように、その宝石は彼の周囲を舞う。

「悪いが俺は、アレが気に入らないんだ。全力で潰させてもらう。
言うが早いか、彼は光の矢となってあの醜い水の化身に突っ込んでいった。


今思えば・・・・

彼の態度が、見たこともない娘への 想いの現われと 思えてならなかった。

「エメル、今のオレの姿をお前が見たらどう思うだろうな。」

ソニックはぼそりとつぶやいた。目の前に千夜一夜の化け物が迫っているというのに、悠長に昔の友人が脳裏をよぎった。
ありあまる力故に悲しい運命を辿った友人を。彼は、ソニックの子供でもあったし、弟でもあった。そしてかけがえの無い友人であった。
世界リングの感情が、渦を逆巻き、一切と合切をまぜこぜにする。内から滲み出る憎しみが、怒りが、悲しみが、使命感が、そして己の信念が、まるで砂漠を焼く陽光のような陰火となってソニックの体をかけめぐる。
あの時、そう、あの時のエメルも、同じ気持ちだったのではないか。なにもかもが流される恐ろしい感覚。それがあの時のエメルと重なる。
今思えば、別れが来るのなら、もっとエメルに教えてやればよかった。と思わない事もない。
しかし、エメルはもう一人前であったし、自分も彼を認めていたのは間違いない。
それでも、と自分らしくない事を思う。
過去は振り返らない、時間は待ってはくれない。ならば、エメル。オレの雄姿を見ていてくれ。
あらゆる感情の濁流に耐えて、一つの事ん成し遂げようとするオレのカッコいい所。絶対に負けない。
この薄暗いどろどろした世界があっちゃいけない。間違いを正すオレの姿を。
お前に対するせめてもの礼儀だ。とオレは思っている。

エメル、今のオレは、カッコいいかい?いつかまた会えたなら、また拳を交えよう。

「こんな世界!願い下げだぜ!」

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