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殴ろうと振り被った腕をあっさりとかわされる。近寄ろうと踏み込む自分を無視して彼は更に遠くへと飛ぶ。逃げる気かと叫べば、ああそうさ俺は卑怯だからと嗤った。その身は本来の青から深く深く色を変え、海底のように暗い。手にしたエメラルドを、指に食い込むほど強く握り締める。意志の力が自分を輝かせ、彼を呼び戻すことを願った。
空を駆ける相手を追ってビルの間を飛ぶ。見下ろす街は廃墟になりつつあった。この地に再び人が暮らせるようになるまでどれくらい掛かるだろう。否、そんなことを考えても意味はない。このまま行けば国どころか世界が崩壊する。
たった一人の、嘗ての英雄によって。
誰もが英雄は無条件に全てを救ってくれるものだと信じていた。
見返りなど求めず、何を言われても正義を守り抜く。
それでこそ英雄であると称えながら、己の怠慢さえも押し付けた。
(何があろうと、どうせ彼が助けてくれる!)
誰もその心を慮らなかった。
だから“長年の友人を失った悲しみ”ぐらいで、彼が崩壊するとは考えもしなかった。
英雄ならそれすら乗り越えていくだろうと勝手に彼を奉り。
そうして今、裏切られたと騒いでいる。
彼らが見ていたのは、英雄と言う名の偶像だった。
最早其処に彼はいなかった。
「俺はただの針鼠に戻るんだ。仲間が死んで悲しくって我侭を言って世界を呪う、俗な針鼠に」
人気の無くなった街中に、彼の笑い声が反響する。瞳は凍てついた氷のようだ。風がひどく冷たい。
「守るものが無いんだ、シャドウ」
だからもう、壊してもいいんだ。
呟いた声が悲しみであったことを、誰が否定できただろう。
2009.8.27
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