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もうすぐ衣替えだから、その前に布団を干そうと彼が言った。その日は良く晴れた日曜で、家中の毛布やシーツをかき集めて屋根に上る。ふかふかの方が気持ちいいだろうと言って、結局冬物も全て引っ張り出した。一仕事終えて昼食を取り、暫くは各自気侭に時を過ごす。
ふと目を覚ましたことで、自分が眠っていたことに気がついた。暫し午睡を貪っていたらしい。そろそろ取り込まなければと屋根に上ろうとしたところで、階段から下りて来る彼と遭遇した。夏用の掛け布団をマントのように羽織っている。
「あ、もう取り込んだぜ。これが最後」
そう言って白い布団をはためかせる。何人分もの寝具を一人で片付けてしまったらしい。それ程長い間眠っていたつもりはなかったが、起こさずにいてくれた彼の気遣いが嬉しかった。同時に少しばかり申し訳なくなる。
「すまなかったな」
「そう思う?」
謝ると彼がにこにこと近寄ってくる。何をするのだろうと見ていると、肩にかけていたそれをふわりと広げた。白い布地が一瞬だけ光に透ける。目を取られた隙に、彼が軽く自分の腕を引いた。次の瞬間には二人揃って包まれている。
掛け布団の中は互いの息が届くほどに近い。くすぐったげに顔を寄せた彼が笑う。
「即席、秘密基地」
「…君は馬鹿だな」
「まーな」
寄せた顔が更に近づいて瞼にキスされる。何かしらの答えを返したくて伸ばした手が彼の頬に触れた。彼の腕も此方の背中へと回される。不安定な姿勢を諦めて、結局そのまま寝転んだ。押し倒された彼が重いぜと笑ったが、聞こえないふりをする。柔らかな布団がクッションになるから、床の上でも痛くないだろう。
 
 
太陽の残り香に包まって猫のようにじゃれあった。
暗くなり廊下の真ん中にも関わらず眠ってしまった彼の額を撫ぜてやる。季節はもう秋に近い。流石に風邪を引くだろうと思いつつも、もう一度だけ布団に顔を埋める。
こういう幸せを沢山噛み締めていけたらいい。
そんなことを思う辺り、甘えている自分を十二分に自覚してしまう。
笑った声は彼には届かず、真白な布地へと吸い込まれていった。
 
 
 

 
2009.8.27
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