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「ブレイズさん、とってもきれいな音が聞こえマス」
大きな耳を高く立て、草原を渡る風を聞くウサギの少女。
夕景の終わりに薄い月が飾られ、歩む先には小さな村明りがある。
「確か、今は祭りの季節だな。収穫を祝って賑やかになる」
「そうなんですか?」
暗くなる道が不安なのか、彼女が私の手を握る。その反対側の手には、親友のチャオを抱いて。
村に近づくにつれ、楽しげな喧騒が届くようになる。
アコーディオンの伴奏に大地の豊穣を喜ぶ祈りの歌声。旅芸人の曲芸への拍手。
「遊んでいくか、クリーム」
「ハイです! でも、少しだけ待ってください」
村への入り口まで来て、彼女は祭りの広場とは別の方向へ歩き出す。
嬉しそうにチャオの手を離すと、彼女の親友は不思議な声で歌い出す。
やがて、喧騒とは別の音が耳にも届くようになる。
滝だ。
轟々と落ちる水音に、チャオがはしゃぐ。
「わかりました! この音だったんですね!」
私にはよく解らなかった。けれど、景色は次第に変わる。
季節を忘れた夜光虫が、ひとつ、またひとつ、現れて消えて、重なり合ってまた輝く。
幻想とはこういう景色のことを言うのだろう。
「クリームには音が聞こえているのだな」
「ハイ! ブレイズさんは聞こえませんか?」
「どんな音がする?」
見つめる景色が輝きを増してゆく。
その光は、まるで。
「ダイスキなひとの音です」
じっと聞いていれば、私にもその音が聞こえるだろうか。
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