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街でばったり会った灰色の彼。
今日はソニックが久し振りに気まぐれであたしのお菓子を食べてくれるっていうから、つい張り切って買い物をしちゃった。紅く艶やかな紅玉に、香り立つシナモン。
そんな帰り道に、この前追いかけっこをした彼にかち合った。

「アンタ、こんな所でなにしてるの?」
「………」

ぐぅううぅうぅ

『…………』

「もう、しょうがないわね、これからアップルタルトを焼くから、アンタも食べに来なさいよ」

家に着いてから、早速準備開始。
小麦粉、バター、砂糖を混ぜて捏ね上げ、タルト生地を作る。
耳たぶの硬さにまでこねるのに、毎回苦労するんだけど。

「………」
「え、なぁに、代わってくれるの?」

タルト生地は彼に任せることにして、あたしは中身を作ることにした。
卵と砂糖と生クリーム。カスタードクリームは彼にも食べられるように甘さ控えめに。
バニラエッセンスを2、3滴。ちょっとしたアクセント。気付いてくれるかな?
ソニックの大好きな林檎を皮を残したまま櫛型にスライスして。

灰色の彼が捏ねる生地は、いい感じの硬さにまでなっている。
これならクリームやヴァニラさんと一緒に作ったのと、いい勝負になるかもしれない。

思わず楽しみで仕方なくて、くるりと1回転。
赤いスカートが、ふわりと広がった。



2008.8.19 otowa shigure


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ちょ、ちょっと待ってよ!

どうにかして搾り出した声は、彼には届いてはいないようだった。
普段は空の色を映した彼の色は、黄金色へと変わっている。
音速の壁を越えてとんでもない速さで景色が過ぎ去っていった。
街の灯りも、草原の花々も、あっという間に彼方へと去っている。

ねぇ、ソニックってば!

非難がましげに彼に声をかければ、チラと振り返り、不敵に笑みを浮かべた。



「もうちょっとで到着だぜ!しっかり捕まってな!!」



…ああ、もう。人の話なんてきいちゃいないのね。


全てを無に帰すかのような威圧感に、シルバーは不覚にも萎縮した。
空の色を映すあの青は一滴の闇を綯い交ぜにするだけで、こんなにも歪んでしまうのだろうか?

「ソニック……おまえ、どうしたんだ…?」

音速を誇るその足に空気が切り裂かれる。ソニックの脚に押し出された透明な体積は真空の刃となってシルバーの頬を掠った。
チリ、とした痛みを感じ、頬に手を当てれば真白の手袋は真紅へと染まっていた。

「Ha、やる気ねぇのか?
お前、死ぬぜ?」

普段の軽口を叩いているように見えるが、その瞳は雄弁にその言葉が本気で発されていることを告げている。それに、普段の彼では死ぬ、などと簡単に口にはしない。
何とかして彼を止めなければならないことだけは、本能的に理解していた。
それなのに、この雰囲気に気圧される。
見たこともない彼の様子に、全てをもっていかれそうになる。

「ソニック、見損なったぞ!お前がそんな奴だったなんて」
「俺は俺だぜ?好きにやって何が悪い」

瞳を逸らしたくなる衝動に駆られながらも、真っ直ぐに相手の視線と交差させる。
紅くなった手袋が、淡いエメラルドの光を放つ。




例え本当に俺が死んでしまうとしても、
死んで彼が戻るのなら構わない。
風の化身の遍く者の希望である彼に、
何としてでも元に戻さなければ。


2008.8.19 otowa.s


「お前が幸せに生きられる場所などない」

そう、脳天から言葉を浴びせられた気分だった。

「お前など生まれて来なければよかったのだ」

言葉の針が心に、凍て付く程の痛みでもって燃えさかる。

「シャドウ、お前なんか死んでしまえばいい」

金糸の少女の微笑が、嘲笑へと変わっていた。











「………!!!!」

叫びにならない叫びと共に、勢い良く体を起こした。全身から噴き出したものは冷たく、心と体を冷やしていく。

「シャドウ?どうしたんだ」
「っ……は、な、なんでも、ない」

暫く荒い息を吐き出し、心を落ち着かせようと深く空気を吸い込む。
チラと横目で言葉をかけた本人に視線を遣れば、気遣わしげなエメラルドの瞳にかち合った。

「何でもない訳ないだろ?」
「本当に、なんでも、ない」
「っったく…」

視線を外してただ気持ちを平穏へと向かわせようと目を閉じる。未だちらつく夢の残骸に、また心が抉られそうになった。
と、その時
ふわりと暖かな体温に包まれる。ゆっくりとした鼓動が、どこか彼女の優しげな笑みを思い起こさせる。

「お前は何も悪くない。お前はお前のままでいいんだ、シャドウ」




08 8 19 おとわ


どうしてだか、涙が止まらなかった。
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