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おねがい、かれをおこさないで

涙で白磁の頬を濡らしながら、金糸の髪と地球を映したような瞳の少女が、倒れたシャドウの横に突如

現れた。

音速を誇る針鼠はまだ眠ったままだ。
究極を誇る針鼠は、たった今目前で闇の球体に呑み込まれた。
思わず腕を伸ばして渾身の力でもって引っ張りあげるが、彼の半身はごっそりと向こうに持っていかれ

ていた。
ボタボタと、彼の中身が地に落ちていく。
ピンク色の細長く蛇腹状のものや、つるりと皺一つない袋状の物体や、白く長細いカルシウムの塊が

、彼の半分になった体から見え隠れしていた。
それでもまだ暫くは意識を保っていたのだが、先ほど宙を一瞥した後、その瞼をゆっくりと閉じた。
せめて流れ出る赤色を留めたくて緑光で包むが、薄ぼんやりとした少女がそれを留めた。

「アンタ…」

おねがい、もう、かれをくるしめないで

涙に濡れそぼった彼女の瞳は、吸込まれそうな程美しかった。


2008.8.21
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