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月日が流れるのは早いものだと、今更ながらに思い知らされる。
あの時ほんの少しだけ言葉を交わした相手は、今や世界の英雄と肩を並べる存在になっていた。
自由奔放な青色のハリネズミとは正反対に、その名前の如く表立って行動するような人物ではなく、
新聞にもニュースにも、その名前があげられることなど皆無に等しい。



それでも、自分は知っていた。

否、覚えている。

彼がどんな選択を行って、どんな道を歩んで来たのかを。






「なあ、シャドウ……お前さんは、今のこの暮らしに満足してるのかい?」

再会したのは、偶然と言っても過言では無かった。自分も相手も、丁度同じ場所に居合わせただけ。
街の少し郊外に鎮座する、知る人ぞ知る小さなカフェ。
まさか出会うとも思わなかった存在に出会った瞬間の相手の凍り付いたような表情は、
いっそ写真に撮っておけば良かったと今更後悔が浮かんだ。
きっとソニックに見せたら、腹を抱えて笑い転げるだろうに。

平静を装っている相手のテーブルには、今月の新作と香り高いアールグレイ。
片や自分と言えば、既におなじみとなった珈琲一杯だけ。
そのあまりの違いに、苦笑すら浮かんでくる。
こちらの質問にもならない問いかけに、相手は少々眉を顰めた。
傾けていたカップをソーサーに置く仕草は優雅だった。カチャリ、と陶器が涼やかに触れ合う。



「………満足もなにも、これは僕自身の意志で決めたことだ。
たとえGUNの実験動物だと、狗だと罵られようとも」
「しっかし……人類のことを一番考えてるのは、お前さんだと思うんだがなぁ」

未だに戦争の報道が消えることはない。
その血腥い場所に立ち尽くしているその漆黒の姿は、その身に纏う紅よりも赤い深紅に染まるのだろう。
落ちきらないその香りと、いくら拭っても消えない血液の痕跡。
それらを一番厭っている存在が、絶対的な力でもって他人の命を奪うのか。

……やりきれない。
きっと自分なら、初めから放り投げてしまうだろう。
自分の身が可愛くない奴など、世界中何処を探しても存在しない。
その役目をあえて引き受けるこの男のその覚悟は、どれほどだったのだろう。

「…用がないのなら失礼させてもらう」
「……また、行くのか」
「仕方ない、これが、役目だというのなら。
僕の意志で、それに従っているのだから」

遠くなってしまった、とひとりごちる。






冷えたカップの中身を口にすれば、
臓腑に苦みが染み渡っていった。






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無題
情景やべえ・・・・ あまりにも あまりにも 渋い
EVI 2009/08/26(Wed)23:52:06 編集
無題
しかしこの短時間でどうしてこんなにいい小説を・・・ ベクターシャドウともにカッコイイなぁ 
こいう 2009/08/26(Wed)23:52:15 編集
無題
二人のすれ違う様がみえます…
たまにはこうやって顔あわせてるといいなあ
ぼね 2009/08/26(Wed)23:52:35 編集
無題
15分とは思えない高クオリティ
格好いいなぁもうー
紫崎亜未 2009/08/26(Wed)23:54:36 編集
無題
すご・・・! やっぱこのお題をやってもらってよかった。
ぽぽ 2009/08/26(Wed)23:55:00 編集
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