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「これ、使ってみる?」

薄暗い部屋の中でルージュがとりだしたのは電動こけしとバイアグラ的な薬だった。
冷たいコンクリートの壁に繋がれたソニックの顔がみるみる青くなっていく。

「は、ハハ。it's joke!....right?」
「ちょっと、今の状況見てわかんないの?大マジよ、大マジ。こいつをアンタに飲ませて、こっちのぶっといのをアンタにぶち込むのよ。おわかりかしら?」
「HEEEELP!HEEEEEEEEEELP!」
「うるっさいわねー。ちょっと色香に惑わされてホイホイついてきたアンタが悪いのよ。」

そういうとルージュは素早くビンダッチーVをソニックに飲ませた。ソニックの愚息がビッキビキのガッチガチになる。流石膨張率300%とうたう商品ではある。
ルージュはデジカメのスイッチを入れ、録画の準備を始める。ルージュはこれがエミーに何万で売れるか考えていた。

「ルージュ!身体が、身体が熱いッ!はち切れちまう!」
「うるっさいわねー。男がびーびー言わないの。…あれ?」

ソニックの身体に異変が起きている。細い手足がたくましく太くなり、牙と剛毛がソニックを野生にみちびいている。
どうやらビンダッチーVは、ソニックの野生を呼び覚まし、ウェアホッグへの覚醒を促したのだった。
ウェアホッグはいとも簡単に鎖を引きちぎり、逃げるルージュの足を掴んだ。

「形勢逆転という奴だな…。」
「嘘…でしょ…?」

ソニックはビンダッチーVの効果か、はたまた自身の加虐心からか、ルージュをメチャメチャにしてやろうと思った。にんまりと笑い、言った。

「さて、何から使おうか、色々あるぜ。全部使うまで離しやしないさ。」
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ソニックは怖かった。月に恐れをいだいたのだ。月を見た途端に訳がわからなくなった。そして気がつけば、辺り一面はメチャメチャ、返り血がべったりと自分をそめていた。
月を見る度にそれは起こった。どうあがいても月は彼を逃しはしなかった。
彼は走った。考えたくないから走った。夜、自分以外の何かが自分を動かしているのを想像して、おぞましくおもった。

彼はカオスエメラルドを求め走った。スーパー化すれば、この恐怖を取り去る何かが見つかるかもしれない。
彼は初めて自分以外の何かに懇願した。

彼は走った。カオスエメラルドは何も答えてはくれなかった。結果彼は夜から逃げるように、今も昼を飛び続けている。
そこに英雄の影はなく、安堵と怯えの入り交じった顔が死んでいるのみだった。

「エメル、今のオレの姿をお前が見たらどう思うだろうな。」

ソニックはぼそりとつぶやいた。目の前に千夜一夜の化け物が迫っているというのに、悠長に昔の友人が脳裏をよぎった。
ありあまる力故に悲しい運命を辿った友人を。彼は、ソニックの子供でもあったし、弟でもあった。そしてかけがえの無い友人であった。
世界リングの感情が、渦を逆巻き、一切と合切をまぜこぜにする。内から滲み出る憎しみが、怒りが、悲しみが、使命感が、そして己の信念が、まるで砂漠を焼く陽光のような陰火となってソニックの体をかけめぐる。
あの時、そう、あの時のエメルも、同じ気持ちだったのではないか。なにもかもが流される恐ろしい感覚。それがあの時のエメルと重なる。
今思えば、別れが来るのなら、もっとエメルに教えてやればよかった。と思わない事もない。
しかし、エメルはもう一人前であったし、自分も彼を認めていたのは間違いない。
それでも、と自分らしくない事を思う。
過去は振り返らない、時間は待ってはくれない。ならば、エメル。オレの雄姿を見ていてくれ。
あらゆる感情の濁流に耐えて、一つの事ん成し遂げようとするオレのカッコいい所。絶対に負けない。
この薄暗いどろどろした世界があっちゃいけない。間違いを正すオレの姿を。
お前に対するせめてもの礼儀だ。とオレは思っている。

エメル、今のオレは、カッコいいかい?いつかまた会えたなら、また拳を交えよう。

「こんな世界!願い下げだぜ!」

「くっくはははは!いいぜ!最ッ高にハイって奴だ!」

英雄と呼ばれたハリネズミが、灰色の工場で高笑いをあげている。足下には、かつてのライバルであるシャドウが横たわっていた。
血だまりがじわりと広がっていく。銃弾をも弾くシャドウの皮膚を貫いて、白い手袋が赤に染まっている。

「イイ!イイぜ、この力!何もとかもとが打ち壊せちまうこの力!」

彼、ソニックは血に濡れた手袋をしゃぶりながら、その表情を狂気で満たしている。

「そこまでだ。ソニック・ザ・ヘッジホッグ。」

鉄の匂いに顔をしかめながら、窓から白銀のハリネズミがソニックをにらんでいる。

「HA!誰かと思えば、シルバーじゃないか!」
「オレは…。アンタを止めるよう、頼まれているんだ。そう、そこのシャドウに。」
「止める?冗談を言うなら、夏休みの宿題を終わらせてからにするんだな。」
「あいにく俺の宿題はアンタだ、ソニック。」

ソニックが狂喜に歪む。にやりと笑った。

「そうかい!ならあの世で永遠に夏休みを過ごすがイイさ!」
「ああやってやるとも!シャドウをボロボロにしたアンタを、許す訳にもいかないんでね!」


「知らなかった。」

シャドウがソニックに背を向けて言った。漆黒に浮かぶ白金のボディがオーラを揺らめかせている。

「守る為に戦うという事、こんなにも、重い物なのだな。」
「そうさ?守る為の戦いは、負けられないからな。」

醜い大トカゲが、吠える。レーザーを放ち数多の機雷を浮かべても、このハリネズミ達の進攻を止める事は不可能だった。
シャドウとソニックは目にも止まらぬ速度で、バイオリザードの腫瘍を叩きつぶしていく。

「守らなければならない、負けられない。なのに、そんなプレッシャーは感じない。何故なんだ。」
「当たり前だろ?俺とお前、二人で抱えてるんだ。世界を救うなんて訳ないさ。頼りにしてるぜ、相棒!」

シャドウは、そうだな、愚問だった。と笑った。二匹のハリネズミは、今まさにリザードを叩き潰しにかかった。

「化け物め!パーティは終わりだ!」
「消えろ!プロフェッサーの怨念とともに!」


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