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誰も入ることを許さない王宮魔術師のマリーナの私室。
魔法のことや、祖父に口で伝えられたものを必死で書き写した羊皮紙の束。
鮮やかな宝玉には淡い光が灯されて、使われる時を今か今かと待ちわびているようだった。
床に書き散らした魔法陣の数々。幼い頃に刻みつけたそれは消え去ることもなく未だそこに魔法の片鱗を残していた。
失敗作の数々の中に僅かに残る、鮮やかな記憶の棺達。




ふわり、と淡い光を体に帯びながら、幼い少女の姿が後ろの家具を透かしながら現れる。
月色の髪、ミルク色の肌。サファイアとラピスラズリを織り交ぜたような深い群青は、
透き通った体にも関わらず吸い込まれてしまいそうなほどに光を湛えて輝きを見せる。

「また来たの…?此処に貴女の居場所はないのよ?」
“わかってるわ。でも、此処に来れば見れるんだもの”

声帯を震わせて発しているわけではない、その少女の声。
鈴を転がすような、耳に心地よいその歌声は、大量の哀しみを帯びて今にも溶けてしまいそうだった。
黄泉の軍団、あまりにも対極な存在の中から現れた、たった一つの光。
無念に囚われるでもなく、憎しみに心を染めるでもなく。
哀しみに彩られてはいても、全てを許しきっているその存在は、自分には眩しすぎるものだった。

「これから、私がすることを知っていて止めないの?」
“だって、止めようとしたって貴女はやめないんでしょう?”
闇から伸びたその光が、部屋の小さな窓まで寄っていく。
彼女も光を帯びているのに、太陽に触れられないのと少し遠巻きに窓の向こうを眺めようとする。

その先に存在している者は、明白と言えば明白で。

「…私の計画が進んだら、もしかしたら彼に二度と逢えなくなるかもしれないのに、それでもいいの?」
“いいわ。だって、きっとわたしのことを知ったら、彼は……”

それ以上の言葉が紡がれることは無かった。
狭い部屋に溢れるのは、哀しみの旋律。




わたしのことなんて忘れて、彼の人生を送ってくれればいいの。
最期にお願いをしてしまったけど、あんなもの、忘れてくれたって構わないの。
彼が彼であったのなら、それで。










誰にも知られずに、一陣の風が、吹く。






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無題
マリアはやっぱり悔いていたんでしょうか。シャドウを縛ってしまっていたこと。
EVI 2009/08/27(Thu)23:25:17 編集
無題
爽やかで、でも切ない…
マリーナは彼女の考え方を理解するのかな
ぼね 2009/08/28(Fri)00:03:38 編集
無題
接点ないのによくぞここまで!
ぽぽ 2009/08/28(Fri)00:52:33 編集
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