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雨の気配に目を覚ました。
春の少し冷たい風にまぎれて落ちてくる水滴はほとんど音を立てない。
すっと胸に沁みこんで、中にあるものを育ててゆく。
少しずつ膨らんで、朝になれば開く花のような。

でも、朝なんてもう待ちきれない。飛んでゆく心を抑えられない。
思い切り走っていれば、春の雨なんてすぐに乾いてゆく。
ふと、隣を見れば、さっきまでみていた夢の続き。
何も知らなかった、子供のころの自分が問いかける。

「この雨はどこまで続いてる?」

そりゃあ、想いを潤おしてくれるひとのところまでさ。
おいおい、不思議そうな顔をするなよ。

部屋が見えた。明かりがついている。うれしくなる。
けど、迎えにくればいいのに、とも思う。
きっと渋い顔をしてるだろう。
部屋を濡らして汚されることを怒るだろう。
大きなタオルでオレを包みながら。

なんて言い訳すればいい?
雨の中に問いかける。
何も知らない、子供のころの自分が答えた。

「雨音を聞きたくなったから」

Good-Idea!
可笑しくて笑うと、不思議そうな顔をして水に遊んで消えていった。

シャドウに夢の話をしよう。
子供のころの自分に会えたら、これが恋だと教えてやりたかったのだ。

あたたかな胸に耳をあて、ほとんど音を立てない、しずかな、しずかな、雨音を聞きながら。
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「テイルス、いるかー!?」

 扉をノックする暇も惜しんでソニックが飛び込んできた。舞い上がる外からの風に、開きっぱなしになっていた図面が飛んでいかないように抑える。

「な、どうしたの?」
「ちょっとオレの家まで来てくれよ!大急ぎで頼むぜ」

 そう言うと、ソニックはガレージの大扉を勢いよく開け放つ。普段なら走っていくのに、今日はトルネード号で行かなきゃならないってくらい大急ぎなのか。さっき機体ごとばらしてチェックしたのは正解だったな。
 スイッチを次々ONにして、エンジンがうなりをあげる。

「いくよ、ソニック!」
「OK! 急いで急いで!」

 その焦りっぷりがかなり切実。
 一体何があったのかな?聞きたいんだけど、聞いてるうちにもうソニックの家の上まで飛んできちゃう。トルネード号だと本当に早い。
 丘の上の小道を滑走路代わりに着陸すると、低空で飛び降りたソニックはもう家の中に入って手招きしてる。
 何か、壊れたってことかな?工具箱を手に追いかける。

「テレビが!」

 ジタバタと部屋の中で足踏みしてるソニック。
 見たいテレビ番組があるのに、どういうわけか映らない、ってことか。
 しかももうすぐ始まっちゃうか、もう始まってるか。この焦りっぷりはなんとなく理解できる。

「わかったよ。映ればいいんだよね」

 ただコクコクとうなずくだけのソニック。
 もうこれ以上詳しいことは聞けそうにない。
 かなりいじったのか、裏の配線もグチャグチャだ。それを一本ずつ巻いて結束したり、抜けかけたコードを挿していくと、大切な映像用のコードが一本ずつ左にずれてるのがわかった。
 これだと映らなくなって当然だ。ちゃんと正しい位置に戻して、うっすら積もったホコリもきれいに拭って電源を入れた。
 ぶん、と静電気が動いて、ソニックの表情がキラキラと輝いた。

「はい。直ったよ」
「THANKS!!! もうダメかと思ったぜ」

 ぴぴぴ、とソニックがリモコンをいじって、映し出された画面には、緑色の草原がどこまでも続いていた。
 ネイチャードキュメンタリーなんて、ソニックが見るとは思わなかった。
 けど、ソニックが見てるのは、渡り鳥の集団だった。その中の一羽を見つけて、テレビが直ったとき以上にホッと胸をなでおろしてる。

「テイルス、お前っていろんなもの作ったり直したりできてすごいな」
「小鳥の怪我を治してあげるよりもずっと簡単なことだよ」

 へへっと笑って、握手を交わす。

 そう。
 僕らはいろいろなものをなおす手を持ってる。

 どんな生活感の無い部屋でも、自分の部屋など持ったことの無かったオレには、その部屋の主の薄い匂いを探してしまう。
 留守番していろ、と言われたけれど、ここには遊べるゲームなんかも無さそうだ。好きにしていいってことは探検はかまわないのか。

 まず目についたのはくもりガラスの窓。外の景色が見えないんじゃ意味なんて無さそうだ。GUNの部屋だから覗かれちゃまずいんだろうな。でも好きにしていいって言ったから大きく開け放つ。窓枠にぶら下がったカーテンがパラシュートみたいに飛んでいく。

 それからキッチン。食器はスチールみたいなカップと白い陶器の皿が何枚か。きっと本人と来客の分だけ。砂糖に塩に香辛料がきっちり並んでる。冷蔵庫ではケチャップが上向きに、マヨネーズは下向きに。
 アルコールは入ってない。ちょっと残念だ。勝手にコーラを貰って一息に飲み干した。

 ランドリーからバスルームも覗く。きっとここは部屋の管理人が掃除してるんだろう。シャワーの下の排水溝に黒以外のトゲが落ちてないか念入りに調べてみた。何もない。じつにざんねんだ。
 思いついて、自分の白いトゲを一本抜いて、排水溝に差しておく。

 またリビングに戻る。風が通り抜けて気持ちがいい。
 ソファーに座ると、沈むように柔らかなクッションに包まれて、つい眠くなってしまう。
 テレビでもつけて待ってようかな。

 


「こんな場所でうたた寝していると身体を冷やすぞ。ベッドで休め」

 ここの家主は、自分のテリトリーではこんな声を出すのか。ここが安息の場所。永遠ではなくても。
 眠くて、身体が動かない。クッションを抱きしめてその温もりを手放さずにいたら、ため息の後で抱きあげられた。

 ・・・そういえば、ベッドは探検してなかったな。
 いい匂いだといいけど、きっと彼の匂いは薄いから、オレの匂いを移してやろうっと。

風を切って走る、その先に青く光るもの。

「HA! お前がイチバン速いだって?聞いて呆れるな!」

ギアの後方に白い煙が追いかける。contrail、飛行機雲ってヤツだ。
オレはその雲に乗り上げ、自分のギアに押し当てる。グラインドレールで滑走するよりも不安定だが、こんな空気の薄い上層の街で繰り広げられるチェイスでは、この方が有効だ、ってこともある。
ふと、雲が途切れる。また風が変わる。
アイツは気流の乱れなどお構いなしに、クルクル回転しながら高い塔と塔の隙間を縫ってゆく。さらにスピードをあげて、逃げてゆく。
つま先を軽く流して、コースを変更。一気に30メートル程落下して、連続トリックをキメる。

地上なんかどこにも見えない。
この狂った重力の世界で、ゴールはあの光る青。

タービュランスを捕まえた。
さあ、こっから先はオレが風になるぜ!
手を伸ばす必要なんかない。
吹き飛んでゆく視界の真下、アイツがオレの存在に気付いた瞬間が狙い目だ。
アイツのプライドごと踏み潰してやるぜ!

「だから、逃がさねぇって言ってんだろ!」
 

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